北海道の行方不明男児保護を巡るニュースは、親のしつけのありようが焦点になりました。子どもをいかに褒め、叱り、育てるか。「子育てのしづらさを持つ親子」を把握し、支援策を切れ目なく講じている大阪市東住吉区のテーマは“親育て”です。児童虐待が社会問題になる中、東住吉区の取り組みは一考に値します。


 東住吉区が“親育て”に重点を置くのには訳があります。2013年2月に発覚した同区の母親による新生児殺害遺棄事件の発生は2006年5月であり、この間、6年余りが空白でした。大阪市側は乳幼児健診の案内を続けていましたが、市の外部識者による検証部会は「目視による安全確認が必要であるとは考えていなかった」と指摘。小倉健宏区長は2013年4月の就任時に行政機関として「自責の念」を抱いていました。

 

■アウトリーチ

 事件を教訓に、東住吉区は「アウトリーチ(手を差し伸べる)」を合言葉に1歳6カ月児健診の未受診者に電話、訪問を実施する一方、問診票を通して子育てのしづらさを持つ親子を把握し、親子教室に誘っています。「友だちと遊べない」などの親の悩みに対して専門家の臨床心理士、保健師、保育士、作業療法士が対応していますが、特筆すべきはその後も手をさしのべ、2~4歳児向けの「親育て、子育ての場」を用意している点です。

 担当するNPO法人ハートフレンド代表の徳谷章子さんが伝える“こつ”は、子どものためになる褒め方です。例えば、子どもが手洗いした時に「偉いね。ばい菌さんはバイバイになって、手で物を持って食べてもおなかが痛くならないね」と褒めます。そうすると、子どもは手を洗えばおなかが痛くならないと納得します。徳谷さんによると、こつを伝えると子育てが楽しくなり、自信を持つ親は増えているそうです。

 

■家族を支える

 大阪市内では東住吉区の事件が発覚した翌年の2014年6月、鶴見区で小学生の男児と母親が無理心中する事件が発生しました。男児は発達障害と診断され、療育を受けていた経緯があり、市の検証部会は「家族全体を支えていく組織的な取り組みが重要」と指摘。併せて、発達障害児の親がその子の行動を理解し、肯定的な関わりができるようになる「ペアレントトレーニング」の必要性も強調しています。

 核家族化が進み、近所付き合いが希薄になる中、子育てに孤軍奮闘する親にいかに手をさしのべていけばいいのでしょうか。「子育ての大変さを語り合い、楽しくする場をつくらなければいけない」と東住吉区保健福祉センターの有馬和代さんが話すように、“親育て”の視点を持った行政施策が求められています。